イランのゲイカップルのインタビュー(3)
先日のエントリーに続くイランのゲイカップルのインタビュー、パート3です。このような長文を翻訳してくださったKEIさん、本当にありがとうございました。
パート1 イランのゲイカップルのインタビュー(1)
パート2 イランのゲイカップルのインタビュー(2)
(以下、訳文です。英文はここにあります。)
ゲイとレズビアンの関係はどのようなものですか。
Kaveh:ごく限られたものです。テヘランでは僕たちが連絡を取って知り合うための手段はインターネットだけです。僕はレズビアンの人とチャットしようと何度もやってみました。知り合いになりたいと言いたかっただけなのですが、彼女たちは疑っていました。マイクで話すか、ウェブカメラをオンにするように頼まれました。レズビアンとチャットしたがる人の多くはセックスを望むストレートの男性だからです。レズビアンの人たちは多くの困難を抱えていました。ゲイのチャットルームにはゲイのふりをしてレズビアンをだまそうとするストレートの人たちがたくさんいました。このためレズビアンの人たちは多くの人たちからのメッセージに返事をしなかったのです。
Kamran:僕が知っているのは、限られた関係の数人のレズビアンだけです。相手を本当に信頼するまでは、彼女たちは自分を明らかにしません。僕がこの数人を知ったのは、昔からの共通の友達がいたからです。でも一般に、彼女たちは関係を結ぶのにはとても慎重で、大きな制約があります。
Kaveh:僕たちはレズビアンカップルを見つけて友達になり、ゲイだからといって女性が嫌いなわけではないことを、みんなに知らせたいと思っています。ゲイも女性と一緒に出かけて、手を握ったり友達になったりしたいのです。ゲイは女性に何のこだわりもありません。同じベッドで寝ようとはしないだけです。レズビアンの友達がいれば、親をだますこともできるでしょうね。彼女たちをガールフレンドだと紹介して親と電話で話してもらえば、親も僕たちを疑うことはないでしょう。社会的なプレッシャーがあるため、親にカムアウトはしたくないですから。親たちが、僕らが女性と関係を持たないということを受け入れることはあり得ないのです。
ゲイとレズビアンがまったく交流がないのはなぜだと思いますか。両者が連帯するにはどのような障害がありますか。
Kamran:お互いをよく知らないからだと思います。レズビアンの人に「どんなセックスをするの」と聞くような馬鹿なゲイに「それは君には関係ないだろ」と教えていけば、こういう問題は減っていくでしょう。レズビアンの人たちはこうした質問をされると動揺します。自分の性的生活をいつもいつも他人に説明したくはないですからね。またイラン社会では女性にボーイフレンドがいなければ、その女性がレズビアンである可能性があります。女性がデートをしない場合、親たちは「とてもよい娘を持った」と言うでしょう。男性の場合とは事情が違います。男性が服装に気を遣い、眉毛を整えて派手な服を着れば、その男性はあれこれ言われるはずです。
Kaveh:レズビアンは考えが足りないのだと思います。カムアウトしなければ誰にもわかりません。レズビアンの人たちは隠れていることを好みます。ゲイは自分のことを話しますが、レズビアンは一言も話しません。だから多くの人が、レズビアンの関係を真面目なものと見ないのです。ポルノ映画では、レズビアンカップルが出てきても、最後は男性とセックスをします。これがレズビアンに対する人々のイメージなのです。ゲイコミュニティとレズビアンコミュニティの距離が縮まり、もっと連帯できるようになれば、こうした問題の多くはなくなると僕は思います。レズビアンコミュニティよりもゲイコミュニティの方がずっと強力です。レズビアンの人たちは、ゲイと同様にカムアウトして、仲間と一緒に活動するようにするべきです。
お二人はイランを脱出して、今はトルコにいます。現在はどういう状況なのですか。
Kamran:イランの時のような生活の安定は得られていません。食事の面でも健康の面でもあまり良い状態ではありません。
Kaveh:こちらに来てからぎりぎりの状況にいます。皮膚はいつもかゆいし。虫のせいかシラミのせいか、何かよくわかりませんが。でもかゆみが激しくて全身が傷だらけでひりひりします。かゆみと痛みで夜もよく眠れません。
Kamran:全身にはれ物ができたような感じです。医者に行きましたが、薬代が高すぎて二人分のお金を出すことができません。40リール(トルコの通貨)もするのです。1人分の処方箋を手に入れて、薬を半分分けにしなければなりませんでした。でもこれではうまく行くはずもなく、処方期間が過ぎる前に薬は尽きてしまいました。これが僕たちの健康状態です。いかに汚い環境にいるかということです。
Kaveh:独身者が家を借りるのはとても大変なので、仕方なく他人の家に間借りしています。状況は絶望的で、みなさんに支援をお願いせざるをえません。食事については、ふつうは1日1食だけで、食べたあとは食事と飢えについて考えなくていいよう、一日中寝て過ごしています。
移民申請はどの段階にありますか。
Kamran:まだ待っている段階です。僕たちは国連に行きましたが、「7ヵ月後にまた来なさい、そのときに面接して事情を聞こう」と言われました。僕たちは体調が良くありません。最後までやり遂げられそうにありません。それまでにきっと恐ろしい病気にかかるか、死んでしまうでしょう。
Kaveh:国連の人に事情を説明したら、「こっちから招待したわけではない、難民/亡命を認められるのは大変だよ」と言われました。持って来たものはすべて使い果たしてしまいました。あなたたち(IRQO)が助けてくれなかったら、どうなっていたか分かりません。7ヵ月後に国連に行くまでの期間、とても不安定な状況に陥ったことでしょう。今は辛抱して待つしかありません。こういう生活の問題とプレッシャーで自殺を図った人もいるし、同じように待ち続けて数年経ったのにまだ待っている人もいます。強制送還された人もいます。ささやかな希望さえ潰えた状況ですが、待つほかに方法はないのです。
どんな将来が待っていると思いますか。
Kamran:わかりません。でもイランの誰もが持っている法的権利を同じように享受したいと思います。それほど大それた望みではないはずですが、イランではそれを望むことがとても難しいのです。
Kaveh:生活面では多くを望みません。イランに40メートルのアパートがほしいですね。そこで僕の愛するパートナーと暮らせるような。朝起きて、仕事場に行き、仕事をして、家に帰ってくつろぐ。それだけです。ボーイフレンドと一緒の静かな生活、ただそれだけです。この夢を実現したいです。誰かを愛したことで絞首刑や石打の刑に処せられるのではなく。
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