« ぺガーさんからのメッセージ(9月8日) | トップページ | 映画『オフサイド・ガールズ』のお知らせ »

ぺガーさんのインタビュー(8月27日)

イタリアの新聞La Repubblica紙に掲載された、Paola Coppola氏によるぺガーさんへのインタビュー原稿をいただいたので、ここに訳文を掲載します。インタビューは8月25日に電話で行われました(この英文原稿はイタリアのGroupEveryoneのご好意により、掲載を許可していただきました)。

以下英文+訳文と続きます。Iはインタビュアー、Pはぺガーさんの略です。

ぺガーさんの話した英語をそのままお伝えしたく、このような形にしました。でも、読みにくいようなら、英語は英語だけ、日本語は日本語だけに編集しなおしますので、ご要望のかたはコメント欄にコメントください。


I:For two years you have been suspended between the hope of starting a new life in a free country and the terror of being deported back to Iran where a terrible fate awaits you. How have you experienced this long wait so far?

I:この2年間、自由の国で新しい生活をはじめるという希望と、残酷な運命が待ち受けているイランへ強制送還されるという恐怖のはざまに、見通しの立たないまま生きてこられたと思います。これまでの長い道のりを、いまどのように受け止めていらっしゃいますか。

P:I'm tired. In the beginning I was full of hope, even if I was worried about my father and I really missed my children who were back in Iran. I knew Great Britain was an open-minded country, one that gave shelter to people. So I decided to come here and apply for political asylum. In Sheffield I even found friends who helped me out. Now and then it seemed as though things were working out well, that my request had been granted, then at other times they told me my application would be turned down, that the Home Office did not believe my story and I would be forced to return to Iran. When that happened I wished I was dead.

P:もう疲れ果てました。イランに残してきた父を心配したり、子供たちを恋しく思ったりもしましたが、初めはそれでも希望に満ちていました。英国は開かれた国であり、人々に避難先を与える国だと知っていました。だからこの国に来ること、亡命することを決めたのです。シェフィールドで私を助けてくれる友達にも出会いました。ときにはいろいろうまくいって私の申請が認められるような様子でしたが、またあるときには、私の申請は却下され、内務省には私の話を信じてもらえずにイランに強制送還されると聞くこともありました。それを聞いたときには、死んでいればよかったのに、と思いました。


I:Why do you think they didn't believe you?

I:彼らはなぜあなたを信じなかったのだと思いますか?

P:I don't know. I escaped from Iran because I am a lesbian woman, because I had fallen in love with another woman and it was getting harder and harder to hide the fact. Then she, who was truly beautiful, was arrested. I found myself in the same situation or I would never have fled, seeing I am very attached to my homeland and I love my children. Perhaps they wanted proof, but I don't know what proof I could have provided them with.

P:わかりません。私はレズビアンだから、そして女性と恋に落ちてその事実を隠すことがどんどん難しくなったので、イランから逃げてきました。彼女は本当に美しい人でしたが、やがて逮捕されました。自分も彼女と同じ状況に置かれていることに気づいたんです。そうでなかったら逃げたりしません。私は子供たちをとても愛していますし、祖国に愛着をもっていますから。多分彼らは証拠を求めていたのでしょう。でも、いったい何の証拠を提出することができたというのでしょうか、私にはわかりません。


I:Have you had any news of your partner since her arrest?

I:パートナーの逮捕後どうなったか、聞いていますか?

P:Yes, she was interrogated and sentenced to be stoned to death because she was judged as being immoral. It still hurts when I talk about her.

P:ええ、拷問を受け、石打ちにより処刑されました。不道徳だと裁きを受けたのです。彼女のことを話すと、いまでも胸が痛みます。


I:Thousands of people throughout the world are close to you right now, they suffer with you, they are protesting by sending letters to the Home Office, to governing bodies, embassies and press. They are asking the United Kingdom to grant you asylum because it is your right. Does this great pro-life movement help you feel less alone and give you back a bit of hope?

I:世界中の数多くの人が、いまあなたとともにいます。あなたの苦しみを自分のこととして感じ、内務省や政府、大使館、報道機関などに手紙を送ったりして抗議しています。みな、イギリス政府にあなたの難民申請を認めるよう要求しています。それはあなたの当然の権利だからです。人命を守ろうとする人々のこういった動きを目の当たりにして、孤独が和らいだり、すこしは希望を感じたりしますか?

P:Yes, all these friendly voices help me retain a bit of hope. Since they brought me here to the Yarlswood Detention Centre all I have thought about is death. I lost all faith and I wished I could die here, without having to go back to Iran, where something much crueler awaits me, something more painful than death.

But I believe in God’s goodness and then suddenly a miracle happened. “Pegah,” a friend of mine told me over the phone, “the whole world is talking about you. A movement has been created which is asking for your life to be spared, asking for your request for asylum to be granted. Your name is in all the papers, on the Internet, everyone’s talking about you.”

Lots of people are taking care of my case now, even a British MP. I have discovered I have a lot of friends, not only among the British movements for homosexual rights, but also friends in Italy who are working hard to save me. I want to thank, in particular, the italian "EveryOne Group", that brought my case all over the world, involving politics, intellectuals and hundred of thousands of people. When the EveryOne Group started to work on my case, my fly to Teheran was already set.

Today, instead, there is still hope for me. The person who is following and helping me here in Sheffield has a name for all the people who have decided to help me: the Friends of Pegah Campaign.

P:ええ、こういった友情に満ちた声すべてが、希望を与えてくれています。ヤールズウッドの収容所に来てからは、死ぬことしか考えられませんでした。信じられるものはもう何もなく、死よりもつらい残酷なことが待ち受けているイランに帰るぐらいなら、死ぬほうがましだと思いました。

それでも私は神の善良さを信じようと思い、そして、突然奇跡が起こったのです。「ぺガー」、友だちが電話で言いました。「世界中の人たちが君のことを話しているんだ。君の難民申請が認められるよう、命が救われるようにと人々が動きだした。君の名前が新聞やインターネットに出て、みんな君のことを話している」。

多くの人が私のケースのために尽力してくださっています。そのなかにはイギリスの国会議員もいます。私には多くの友人がいることを知りました。イギリスで同性愛者のための運動をしている人たちだけでなく、イタリアの人たちも私のことを助けようと必死になってくれています。特に、EveryOneグループのみなさんには、たいへん感謝しています。彼らのおかげで、私のことが世界に広まり、政治家、学識者、そして幾千もの人々が支援の輪に加わってくれたのです。EveryOneグループが私の支援をはじめてくれたとき、強制送還のためテヘラン行きの航空便が準備されていました。

いま、私には希望があります。シェフィールドで私のことを助けてくれている人が、私を支援してくださっているみなさんすべてのことを「フレンズ・オブ・ぺガー・キャンペーン」と呼んでいます。


I:In Iran homosexual people are forced to keep it secret, because if they are found out they risk torture, 100 lashings and when they are “second-time offenders”, death by stoning or hanging. Iranian gays and lesbians are following your case with trepidation and they now consider you a symbol. What are your feelings when you think of them?

I:イランでは、同性愛者はセクシュアリティを隠すことを強要されています。拷問にあったり、100回のむち打ちを受けたり、二度目となると石を投げられたり、吊るされたりして処刑される危険に直面しているからです。イランのゲイやレズビアンの人たちは、あなたのケースを不安を覚えながらも彼らのシンボルとして注目していると思います。こういったイランのゲイやレズビアンの人たちについては、どのように感じていますか?

P:I feel worried and anguished. I just hope things change, that the laws change.

P:とても心配だし、悲痛な思いです。ただただ変化が起こり、法律が変えられることを望みます。


I:Do you have a message for the authorities who are responsible for deciding whether to grant political asylum to homosexual refugees?

I:同性愛者の難民に政治亡命を認めるかどうか決断を下す当該機関に対し、どのようなことを伝えたいですか?

P:Save their lives.

P:彼らの人命を救ってください。


I:You were condemned because of your way of loving, merely because it is different from the majority of people. The great Irish writer Oscar Wilde defined the sentiments of a person for someone of the same sex as “the love that dare not speak its name”. You had the courage to tell the world. What does love represent for you?

I:あなたはあなたの愛の形のために、それがマジョリティの人々とは違うことから、非難されました。アイルランドの文筆家オスカー・ワイルドは、同性に向かう感情を「あえてその名を口にせぬ愛」と名づけました。それを世界に告げる勇気があったあなたにとって、愛とは何ですか。

P:It is the most important thing. Thanks to love most men and women create a family and fulfil their lives. As you know, it was love that guided my life and whatever happens to me, it will be love that guides me still.

P:愛は一番大事なことです。愛があるおかげで、多くの人々は家族を作り、実りある人生を送ります。ご存知の通り、愛こそが私の人生を導いてきたものであり、どんなことがあったとしても、これからも愛に導かれてゆくでしょう。


I:We are all convinced there will be a happy outcome to your story, that your rights will soon be acknowledged. Have you already thought about your future, about the dreams you wish to come true?

I:私たちはあなたの人権が認められ、いい結果がでるはずだと信じています。これからのこと、かなえたい夢などがあればお聞かせください。

P:I want to walk among people, without looking behind me, and being able to say to myself; “I am free”.

P:人ごみのなかを、誰かを気にして振り返ることなく歩きたいです。「私は自由だ」と言いながら。

|

« ぺガーさんからのメッセージ(9月8日) | トップページ | 映画『オフサイド・ガールズ』のお知らせ »

コメント

いつもたくさんの情報を提供してくださってありがとうございます。

イスラム法がたった数十年で改正されることはないでしょうが、イスラム圏外の日本を含む国々が、同性愛難民の方々の受け入れに対し、今以上に寛容になるために学生の私ができることって何なのでしょう。
先のジェイダさんのケースの結果は日本にとって恥ずべきものでしたし、そんな長期の裁判や第三国への亡命なんてことが、もう二度と起こらないでほしいです。

ペガーさんの心情を目にし、彼女が一刻も早く難民になれることをいっそう深く念じるばかりです。

投稿: aya | 2007年9月 9日 (日) 11時00分

貴重な翻訳、ありがとうございました。

>人ごみのなかを、誰かを気にして振り返ることなく歩きたいです。「私は自由だ」と言いながら。

マイノリティであるが故に、胸を張れない人生はおかしいと思います。

”違い”を理由に生命の危機にさらされるのはどう考えてもおかしいでしょう。

皆が手をつないで仲良く歩く必要はないかもしれませんが、皆が堂々と陽のあたる道を歩いていける世界を目指すべきだとおもいます。

投稿: K3VOY | 2007年9月10日 (月) 01時07分

ayaさま
私もayaさんと同じように「自分にできることは何だろう?」といまでも自問中です。今回は友だちに話したことで、このようなブログができ、皆さんの協力を得られることとなりました。こうなるとは全く予想していませんでした。(笑)自分は人権問題の専門家ではないけれど、とりあえず自分の思いを人に伝えてみることの大事さ、そこから生まれるちからを感じました。もちろん、いろいろなことをもっと勉強しなくては、と今は思いますが。今回、オンライン署名の増えてゆく名前を見ながら、ayaさんたちのように心ある人たちはたくさんいるんだなとうれしく思いました。ほそみゅ

投稿: 管理人二号 | 2007年9月12日 (水) 19時14分

K3VOYさま
コメントありがとうございます。ブログでも取り上げてくださってありがとうございました。

>”違い”を理由に生命の危機にさらされるのはどう考えてもおかしいでしょう。

本当にそう思います。レズビアンである、ということ以外でも、さまざまな「違い」を理由に他者を否定したり、拒絶したりすることは、自分の中にもあるような気がします。生命を奪うところまではいかなくとも。ふと、そんなことも思いました。これからもよろしくお願いします。 ほそみゅ

投稿: 管理人二号 | 2007年9月12日 (水) 19時27分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ぺガーさんのインタビュー(8月27日):

« ぺガーさんからのメッセージ(9月8日) | トップページ | 映画『オフサイド・ガールズ』のお知らせ »