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2007年9月の20件の記事

【YOMIURI ONLINE】米コロンビア大でイラン大統領講演、賛否巻き起こす

【ニューヨーク=佐々木良寿】国連総会出席のためニューヨーク入りしているイランのアフマディネジャド大統領は24日、ニューヨーク市内のコロンビア大で講演した。


名門大による同大統領招請は激しい議論を巻き起こし、大学正門前ではユダヤ系学生団体が大規模な抗議集会を開いた。

ボリンジャー学長は講演会の冒頭、「大統領は、狭量な独裁者のあらゆる兆候を見せている」と、厳しい表現で大統領を紹介。人権侵害の現状やホロコースト(ユダヤ人大虐殺)否定、イスラエル抹消発言、核開発問題など6項目に関して考えをただした。

大統領は「中傷で迎えられたことは心外だ」と不快感を示したうえで、核問題について、「二、三の自己中心的な大国が、国際原子力機関(IAEA)加盟国に認められている核の平和利用の権利を奪おうとしている」と暗に米国などを批判した。また、同性愛者への弾圧についての質問に対し、大統領は「イランには、そうした人たちはいない」と述べて失笑を買った。

同大統領招請をめぐっては、「アフマディネジャドを賓客として迎えることは全ニューヨーク市民に対する侮辱だ」(クリスティン・クイン市評議会議長)などと強い批判を引き起こしたが、ボリンジャー学長は、「世界の現実を理解しようとすれば、時には唾棄(だき)すべき言説にふれることも避けられない」などと理解を求めていた。

(2007年9月25日22時0分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070925id26.htmより。

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Pinknews.co.ukのコラム

ゲイジャパンニュースのサイトで、イギリスのLGBTニュースサイトPinknews.co.ukに掲載されたぺガーさんの件に関するコラムを翻訳して紹介しています。

こちらからお読みください。
「遺憾の意を込めて<上>」

また、
ゲイジャパンニュースでの過去の関連記事も参照してみてください。

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イランのゲイカップルのインタビュー(3)

先日のエントリーに続くイランのゲイカップルのインタビュー、パート3です。このような長文を翻訳してくださったKEIさん、本当にありがとうございました。

パート1 イランのゲイカップルのインタビュー(1)

パート2 イランのゲイカップルのインタビュー(2)

(以下、訳文です。英文はここにあります。)


ゲイとレズビアンの関係はどのようなものですか。

 Kaveh:ごく限られたものです。テヘランでは僕たちが連絡を取って知り合うための手段はインターネットだけです。僕はレズビアンの人とチャットしようと何度もやってみました。知り合いになりたいと言いたかっただけなのですが、彼女たちは疑っていました。マイクで話すか、ウェブカメラをオンにするように頼まれました。レズビアンとチャットしたがる人の多くはセックスを望むストレートの男性だからです。レズビアンの人たちは多くの困難を抱えていました。ゲイのチャットルームにはゲイのふりをしてレズビアンをだまそうとするストレートの人たちがたくさんいました。このためレズビアンの人たちは多くの人たちからのメッセージに返事をしなかったのです。

 Kamran:僕が知っているのは、限られた関係の数人のレズビアンだけです。相手を本当に信頼するまでは、彼女たちは自分を明らかにしません。僕がこの数人を知ったのは、昔からの共通の友達がいたからです。でも一般に、彼女たちは関係を結ぶのにはとても慎重で、大きな制約があります。

 Kaveh:僕たちはレズビアンカップルを見つけて友達になり、ゲイだからといって女性が嫌いなわけではないことを、みんなに知らせたいと思っています。ゲイも女性と一緒に出かけて、手を握ったり友達になったりしたいのです。ゲイは女性に何のこだわりもありません。同じベッドで寝ようとはしないだけです。レズビアンの友達がいれば、親をだますこともできるでしょうね。彼女たちをガールフレンドだと紹介して親と電話で話してもらえば、親も僕たちを疑うことはないでしょう。社会的なプレッシャーがあるため、親にカムアウトはしたくないですから。親たちが、僕らが女性と関係を持たないということを受け入れることはあり得ないのです。

ゲイとレズビアンがまったく交流がないのはなぜだと思いますか。両者が連帯するにはどのような障害がありますか。

 Kamran:お互いをよく知らないからだと思います。レズビアンの人に「どんなセックスをするの」と聞くような馬鹿なゲイに「それは君には関係ないだろ」と教えていけば、こういう問題は減っていくでしょう。レズビアンの人たちはこうした質問をされると動揺します。自分の性的生活をいつもいつも他人に説明したくはないですからね。またイラン社会では女性にボーイフレンドがいなければ、その女性がレズビアンである可能性があります。女性がデートをしない場合、親たちは「とてもよい娘を持った」と言うでしょう。男性の場合とは事情が違います。男性が服装に気を遣い、眉毛を整えて派手な服を着れば、その男性はあれこれ言われるはずです。

 Kaveh:レズビアンは考えが足りないのだと思います。カムアウトしなければ誰にもわかりません。レズビアンの人たちは隠れていることを好みます。ゲイは自分のことを話しますが、レズビアンは一言も話しません。だから多くの人が、レズビアンの関係を真面目なものと見ないのです。ポルノ映画では、レズビアンカップルが出てきても、最後は男性とセックスをします。これがレズビアンに対する人々のイメージなのです。ゲイコミュニティとレズビアンコミュニティの距離が縮まり、もっと連帯できるようになれば、こうした問題の多くはなくなると僕は思います。レズビアンコミュニティよりもゲイコミュニティの方がずっと強力です。レズビアンの人たちは、ゲイと同様にカムアウトして、仲間と一緒に活動するようにするべきです。

お二人はイランを脱出して、今はトルコにいます。現在はどういう状況なのですか。

 Kamran:イランの時のような生活の安定は得られていません。食事の面でも健康の面でもあまり良い状態ではありません。

 Kaveh:こちらに来てからぎりぎりの状況にいます。皮膚はいつもかゆいし。虫のせいかシラミのせいか、何かよくわかりませんが。でもかゆみが激しくて全身が傷だらけでひりひりします。かゆみと痛みで夜もよく眠れません。

 Kamran:全身にはれ物ができたような感じです。医者に行きましたが、薬代が高すぎて二人分のお金を出すことができません。40リール(トルコの通貨)もするのです。1人分の処方箋を手に入れて、薬を半分分けにしなければなりませんでした。でもこれではうまく行くはずもなく、処方期間が過ぎる前に薬は尽きてしまいました。これが僕たちの健康状態です。いかに汚い環境にいるかということです。

 Kaveh:独身者が家を借りるのはとても大変なので、仕方なく他人の家に間借りしています。状況は絶望的で、みなさんに支援をお願いせざるをえません。食事については、ふつうは1日1食だけで、食べたあとは食事と飢えについて考えなくていいよう、一日中寝て過ごしています。

移民申請はどの段階にありますか。

 Kamran:まだ待っている段階です。僕たちは国連に行きましたが、「7ヵ月後にまた来なさい、そのときに面接して事情を聞こう」と言われました。僕たちは体調が良くありません。最後までやり遂げられそうにありません。それまでにきっと恐ろしい病気にかかるか、死んでしまうでしょう。

 Kaveh:国連の人に事情を説明したら、「こっちから招待したわけではない、難民/亡命を認められるのは大変だよ」と言われました。持って来たものはすべて使い果たしてしまいました。あなたたち(IRQO)が助けてくれなかったら、どうなっていたか分かりません。7ヵ月後に国連に行くまでの期間、とても不安定な状況に陥ったことでしょう。今は辛抱して待つしかありません。こういう生活の問題とプレッシャーで自殺を図った人もいるし、同じように待ち続けて数年経ったのにまだ待っている人もいます。強制送還された人もいます。ささやかな希望さえ潰えた状況ですが、待つほかに方法はないのです。

どんな将来が待っていると思いますか。

 Kamran:わかりません。でもイランの誰もが持っている法的権利を同じように享受したいと思います。それほど大それた望みではないはずですが、イランではそれを望むことがとても難しいのです。

 Kaveh:生活面では多くを望みません。イランに40メートルのアパートがほしいですね。そこで僕の愛するパートナーと暮らせるような。朝起きて、仕事場に行き、仕事をして、家に帰ってくつろぐ。それだけです。ボーイフレンドと一緒の静かな生活、ただそれだけです。この夢を実現したいです。誰かを愛したことで絞首刑や石打の刑に処せられるのではなく。


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イランのゲイカップルのインタビュー(2)

イランのゲイカップルのインタビュー(1)の続きです。

ここには2つの問題があると思います。なぜ人々は同性愛者を「evakhahar」と呼ぶのか。そして「evakhahar」とはどういう意味か、というものです。またKamranさんは、歌手や映画俳優などの有名人、つまり人々がいつも見かけて、ある意味で毎日交流している人物[の中にも同性愛者がいる]ことも挙げられましたね。ではなぜ同性愛が受け入れられないのでしょうか。

 Kamran:文化と考え方からして受け入れるのが不可能なのです。せいぜい、ゲイの有名人は普通の人とは違うのだと言うだけでしょう。実際には違いはありません。有名人であろうと、僕と同じ性欲の持ち主なのです。
 もう1つの点については、男性同性愛者は「ゲイ」と呼ばれます。ゲイとは、男性的に振る舞い、男性の服装をして、男性とつきあうことを望む男性です。イラン文化において、ゲイとはメイクをして女性のような振る舞いをし、女性の服装をする男性だと考えられています。こうした男性は「evakhahar」と呼ばれます。しかしこうした男性はゲイではないことが多いのです。彼らは単にドレスを着てメイクをしたいだけで、つきあう対象は異性なのです。

 Kaveh:人々は「evakhahar」という言葉をその場その場で使い分けているように思います。僕も「evakhahar」と呼ばれたことがあります。状況次第なのです。「evakhahar」とは社会のカテゴリーに合わない人々のことですよ。たとえば僕がZaferanieh(テヘラン北部の富裕層の居住地域)に住んでいるなら、派手なヘアスタイルで眉毛を整えてイヤリングをしていたとしても、「流行の最先端だね」と言われるだけです。誰もがそれをすごくクールだと思うでしょう。ところがKhorasan広場(テヘラン下町の宗教心が強い労働者階級の住む地域)に住んでいるなら、こんな服装をして家から出ると「evakhahar」と呼ばれることでしょう。周りの人々の価値観と合わないからです。このKhorasan広場に住む「evakhahar」はどんなカテゴリーにも適合しません。このゲイは、お金がないのでコンピュータを持たずインターネットもできません。そして自分の性的指向について語り合える友達もいないのです。ゲイコミュニティを見つけ出し、友達を作り、できれば友達以上の存在と出会えるようにと努力します。しかし自分の周りの世間のプレッシャーがあまりにも強く、お前は「evakhahar」だ、お前は女だ、と何度も何度も言われるために、彼はついに自分が女性だと信じ始めます。このプレッシャーを和らげるために、性転換手術を受けるところまで行ってしまうかもしれません。彼は会社の部長かもしれないし、従業員を雇う立場にいるかもしれません。でも彼は、自分の同類と何とかしてつきあうために、夜、友達と出かけるときにはメイクをするようになるかもしれません。こうして彼は自分の同類を見つけ出して性欲を満たすために、女性的に振る舞い、気を引くような態度を取り、両手を特定の形に動かすようになります。イランにはゲイコミュニティのための場所がないので、人々は彼を見て、「ああ、あそこにセックスをしたがっているevakhaharがいる」としか思いません。もちろん、どんな文化にも長所と短所があります。極貧の女性もいれば、極貧の男性もいます。異性愛者の中に売春婦がいるように、同性愛者の中にも男娼がいます。

それはつまり、テヘランの下町の住民に一般的な服装をした人物、自分の住む地域では完全に普通で、誰にでも受け入れられる服装をした人物が北部に行けば、それこそ放浪者かホームレスと思われてしまうということですか。

 Kaveh:まったくその通りです。

同性愛がファッションのトレンドで、クールであり、ゲイであることやゲイの友人がいることが上流階級の証拠であり、洗練された開かれた心の象徴だと多くの人が考えています。これについてはどう思いますか。

 Kamran:ええ、同性愛は何となく上流っぽいものとして商品化されています。しかし一方では、夜、食べるものもないゲイの人々も存在しています。同性愛は経済的に恵まれているかどうかには何の関係もないのに、一部の人々は流行のスタイリッシュなトレンドだと見なしているのです。

つまりテヘラン北部に住む男性にとって、イヤリングや指輪をつけ、スポーティでクレージーな髪型を決めて、奇抜な服装をしても異性愛者でいられ、逆にファッションとしてのゲイ男性を気取ることが可能なのですね。

 Kaveh:ええ、実際にはゲイではないのに、周りの人に自分はゲイだと言いふらしている人がたくさんいます。テヘランではゲイは、南部のゲイと北部のゲイという2つのグループに分かれています。上流階級のゲイと労働者階級のゲイと言い換えてもいいでしょう。労働者階級のゲイは生きるために懸命です。彼らには仕事がないのです。何とか仕事にありついても、すぐに仕事場で次々と問題が生じます。このため一般的に、彼らには収入と言えるほどのものがありません。親が小遣いを与えることもありません。学校に行く金も、本を買う金も、授業料を払う金もありません。お金がないため高等教育を受けるのは初めから無理です。近所の人にはあざけられ、友達を作るのもきわめて困難です。今どきの若い人々の多くは服やブランドにとても気を遣うので、ますます彼らは辛い状況に追い込まれます。こうしたゲイたちの直面している問題は、富裕層のゲイが抱える問題よりはるかに激しく、恐ろしいものです。もちろん富裕層のゲイにも困難がないわけではありません。彼らは通常、親から車と住居とお金を与えられた上で、「どこかに行って、親とはかかわりなく勝手に暮らせ」と言い渡されます。こうしたゲイたちは高級住宅街にすてきな邸宅を構え、自営業を営み、親から小遣いをもらい続けます。労働者階級のゲイが上流階級のゲイと関係を持つこともよくあります。彼らは新顔として珍しいうちは上流階級のゲイの相手にされますが、しばらくするとこうした関係は当然ながら終わりを告げます。これは上流階級のゲイにとって手頃な遊びの1つなのです。

 Kamran:イランは厳しい階級社会ですが、この2つの階級は常に互いに関係を持っています。関係を持たざるを得ないのです。

同性愛者の数は増えていると多くの人が考えています。家族のレベルでは、身近に、それこそ個人的に知っている人の中に同性愛者がいることが何年も前から認められていたのですが、最近、ゲイがファッショナブルと見なされるようになってからますます多くなっているようです。なぜ人々はこんな風に考えるようになったのでしょう。

 Kamran:理由は明白です。僕たちは5年前には連絡を取り合う手段がありませんでした。今ではどの家にもコンピュータか衛星放送のアンテナがあります。10年前には自分がゲイであることを自覚するための広域的な媒体がありませんでした。しかし自分の心の中の感情を自覚していなかった多くのゲイが、テレビや衛星放送の番組を見て、自分がゲイであることをに少しずつ気づき、自分のアイデンティティに目覚めています。僕の考えでは、さまざまな議論が始まり、文化が進み、通信手段が発達するにつれて、より多くのゲイがクローゼットから出てくるでしょう。同性愛者は蟻のようにほっておけば増殖して増大するものではありません。同性愛者は常に存在していましたが、徐々に社会の中枢にも見える存在になってきているということです。

(パート3に続きます…。このインタビューの翻訳はKEIさんがしてくださいました。これからもイランのLGBTの人たちのこと、LGBT難民のことなど、できるだけ生の声を伝えたいと思っています。それで、翻訳、記事集めなどのお手伝いをしてくださる方を常に募集していますので、やってみたいと思われる方がありましたら、お気軽に管理人までご連絡ください。よろしくお願いします。また、こういうことを知りたいというリクエストがありましたら、それもお送りください。メールでの連絡でなくとも、コメント欄にひとこと残してくださってもかまいません。こちらもよろしく。)

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イランのゲイカップルのインタビュー(1)

イランクィア協会のサイトに掲載されているゲイカップルのインタビューを、KEIさんが翻訳してくださいました。長文の翻訳作業、本当にありがとうございました。これから何回かに分けて掲載します。

英文はここにあります。
http://www.irqo.net/IRQO/English/pages/090.htm

(以下訳文)

イランのゲイカップル:KamranとKavehへのインタビュー
聞き手:Arsham Parsi
英訳:Solmaz
編集:Ava

自己紹介をお願いします。

 名前はKamranといいます。24歳です。パートナーのKavehは25歳で、二人がつきあって約3年になります。

イランの同性愛者にとっての問題とは何ですか。

 Kaveh:まず第一に、自分たちの問題をまったく議論できないことです。僕たちは性的指向が原因で政府とうまくいっていません。イスラム政府は僕たちを認めず、僕たちは罪あるものとして絞首刑と石内の刑に処せられます。このことに比べれば、その他の問題は些細なことです。
イランでの同性愛者の生活はどういったものでしょうか。

 Kamran:とても簡単です。仕事はできず、楽しみもなく、出かけることもできません。まともな人間じゃないという視線を浴びせられるので、パートナーと出かけることもできません。そういう風に見られるのが苦痛でたまりません。外見的には他の人々と何の違いもないのに差別されるのです。このため僕たちの生活はきわめて困難です。何も間違ったことはしていないと自分では確信しているにもかかわらず、社会的に「正常ではない」と決めつけられる、このこと以上に大きな問題はないと思います。ひどい目に遭わされても、公的機関や警察に訴えることもできません。訴えればもっとひどい目に遭うからです。

同性愛者にとって、家族との問題にはどういったものがありますか。

 Kamran:家族の反応は、世の中の反応とまったく同じです。どんなに近い家族でも、自分たちを受け入れることはあり得ません。同性愛は、家族を含めたイランの人々にとって、認められない問題なのです。いとこやおじたちと同じではないという理由で、家族は僕たちが違う種類の人間だと見なしています。友人や知人と同じではないから、社会的な集まりにも参加することができません。なぜなら僕たちが同性愛者だからです。それが唯一の理由です。僕たちが世の中の人々の中に溶け込もうといくら努力しても、関係ありません。彼ら[親たち]は、自分たちの子どものことですから、僕たちが違うことを常に感じ取ってしまうでしょう。

ご家族は、同性愛者だと知っているのですか。

 Kamran:ええ、僕の家族はかなり昔から知っています。

 Kaveh:僕の家族は理解できないでしょう。年齢や健康の問題で、理解できるような状態ではないので、家族に話をしない方がいいと僕は思っています。その上、もし話したとしても、子どもの遊びにすぎないと考え、まともに取り合ってくれないでしょう。以前に問題が起きたときに、家族が僕とKamranとの関係に興味を示しました。それで彼と自分は親友として一緒に暮らしたいのだと説明しました。彼らは僕たちのことを仲の良い友達だと思っています。でも二人がゲイだということは信じないでしょう。そんなことはおそらく考えても見ないことでしょう。

もしゲイだと告白したら、家族はどんな反応を示すと思いますか。

 Kaveh:僕の家族は、それを認めはするでしょうが、両親はショックで心臓麻痺を起こすと思いますよ。兄ともうまく行かなくなるでしょう。そして確実に、家から追い出されることでしょう。

親が自分の子どもが同性愛者であることを受け入れられないのはなぜだと思いますか。受け入れてもらえるようにするにはどうしたらいいでしょう。最も重要な問題は何だと思いますか。

 Kamran:一番大きな問題は、この国の社会環境だと思います。同性愛に関する自由がすべて認められているヨーロッパにおいても、親が同性愛者である子どもを受け入れることはそれほど一般的なことではなく、受け入れることに困難を覚える家族もあることを、僕は知っています。たとえば、同性愛者が大きな自由を享受している国の1つであるイギリスでも、人々は同性愛者と異性愛者のライフスタイルは違うものだと考え、[同性愛者の関係が]正常な関係だとは見なしていません。イランでは、政府が宗教に立脚しており、他国との関係もきわめて限られたものであるため、問題はもっと大きくなります。法的な障害を取り去ることができれば、同性愛に対する人々の考えも変わるかもしれません。同性愛について議論し、好むと好まざるにかかわらず同性愛者は存在しているのだ、治療によって根絶できる病気とは違うのだ、時間が経てば回復する一時的な気の迷いではないのだと、人々に伝えることもできるようになるかもしれません。女の子に女の子ではなくなれと言ったり、男の子に男の子らしく振る舞ってはいけないと命令することはできません。男性同性愛者に同性愛者でいることをやめろと命じることはできません。男性同性愛者に、「ゲイであることをやめろ。女性と恋愛して結婚しろ」と言っても無駄なのです。僕たちの家族は伝統的な価値観を持っていて、子どもたちも同じようになってほしいと思っています。子どものことより、近所の人や友人が何を言うかの方を気にします。ゲイ男性としての僕は家族にとって、近所の人や地元の物売りよりも価値のない存在なのです。彼らの基準から見た正常な人間になって、他人から「立派な息子さんをお持ちですね」と言われるためなら、僕がどんなに苦しんでも気にしないのです。

 Kaveh:イランにおけるもう1つの問題は、同性愛に関する知識がまったくないことです。自分がゲイであると気づかないで結婚したものの、結婚生活に幸せを感じないことから、自分がゲイであることに気づく人たちもいます。また離婚はしても、自分の同性指向を恐れる人もいます。イラン人家族の中で、知能にハンディキャップのある子どもは、他の兄弟姉妹を差し置いて、全面的なケアを受けます。家族はハンディキャップを神が望まれたことだと受け止め、その子が誰からもひどい扱いをされないように気をつけます。しかし同性愛も神が望まれたことだと、彼らは考えません。同性愛者なのは、女性とつきあったことがなかったから、あるいは性倒錯者だからだと考えているのです。同性愛を社会に存在する自然な出来事とは見なさず、自分から求めて選び取ったものだと考えているのです。僕らは選んで同性愛者になったわけではありません。同性愛者に生まれついたのです。それ以外に答えなんかありません。

 Kamran:僕らの生活の精神面について人々が何も知らない、ということも問題です。同性愛とは同性とセックスすることだけだと思っています。イランの人々の多くは、「同性愛とはセックスだ」と思い、またそう言っています。残念ながら教育のない人々の一部からは、わたしがゲイと「やりたがっている」んだろうと言われます。つまりゲイとは彼らにとって誰とでもセックスをしたがる男娼なのです。

 Kaveh:ゲイに対するこうしたステレオタイプな偏見はどこから来るかというと、ゲイのウェブサイトからだと思います。インターネットで「ゲイ」や「同性愛者」という言葉を検索すると、はだかの男や女の姿や陰部が掲載されているサイトが見つかります。だから人々はゲイとは誰とでもセックスをしたがる連中だと思いこんでしまうのです。
 たとえば、IRCOのサイトにある記事は家族に役立つものなので安心して印刷し、「これを読んで、この問題についての意見を見てほしい」と家族に頼めます。イランには情報源がないからです。それ以外には、インターネットのポルノ・サイトしかありません。人々の同性愛者に対するイメージは、Daneshjou公園で誰かに車に乗せてもらうのを待っている、いつでもセックスのことしか考えていないevakhahar(けばけばしい女装した同性愛者)なのです。

 Kamran:同性愛が病気だと思うなら、立派な職業に就いた多くの仲間がいることを考えてみて下さい。医師、技術者、芸術家、化学者にも多くの同性愛者がいます。同性愛がわいせつな病気であるとしたなら、教養があり、高等教育を受けて社会的にも成功しているこうした人々のことをどう考えればよいでしょうか。成功した企業の管理職にも多くのゲイがいます。彼らが成功したのはなぜでしょう。同性愛者だから病気のはずだとでも? もちろん彼らに何の悪いところもありません。ただ性的指向が異なっているだけなのです。同性愛者は同性愛者として生まれます。環境によって同性愛者になることもあると考える人もいますが、僕はそうは思いません。

(明日以降の次回に続きます…)

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最新状況(9月11日)

9月11日午後9時(イギリス時間)、ぺガーさんの支援団体Friends of Pegahより、ニュースが入ってきました。

ぺガーさんは強制収容所からの保釈申請が認められ、今朝、収容所を出ることができたそうです。そして、難民認定の再審査の要求も認められ、これから裁判所でぺガーさんのケースはもう一度検討されることとなります。この決定により、今まではいかなる時でも強制退去執行命令を受ける可能性がありましたが、これからはいきなり強制退去せよという命令を出されることはなくなり、裁判というプロセスを通して結論がでることになります。最終的に難民申請が認められるかどうか結果がでるまでには、数ヶ月かかるのではといわれています。

ひとまず、保釈が認められぺガーさんが少しずつでも日常を取り戻すチャンスを得たことは、素晴らしいことです。

しかし、まだ難民申請が認められたわけではないので、彼女がイギリスでの滞在権を得るまで皆さんの引き続きのご協力を必要としています。Friend of Pegahからのメッセージにも、皆さんの支援なしには、ここまで来ることができなかったとあります。今後ともさらなるご協力をお願いいたします。

Friends of Pegahのスタッフに確認したところ、具体的には、オンライン署名の引き続きの呼びかけと、イギリス内務大臣、内務省入国管理局担当大臣に向けてのぺガーさんの難民認定、今後のLGBT難民申請者のイランへの強制送還の停止を求める要請をFAXで送るという二点をお願いしたいとのことでした。

現在の状況を踏まえた新しい要請文を現在作成中ですので、出来上がり次第ブログにアップします。

(以下、Friends of Pegahからの9月11日付けのメッセージです。早速翻訳してくださったゲイジャパンニュースの山下梓様、いつも翻訳のご協力を頂き、本当にありがとうございます。)

みなさん

ついにいいニュースです!今朝、ペガーさんが保釈され、ヤールズウッドの収容施設を出ました。彼女のことを愛し大切に思ってくれる人たちのもとへ、戻ってきました。上訴裁は、ペガーさんのケースを審理することで合意しました。審理は、今後2週間以内に始まり、2~3ヶ月以内に何度か行われるものと思います。

この他、イギリス国内では、ペガーさんの代理としていくつかの影響力ある団体が、重要なアクションを行う予定です。

私たちがペガーさんをサポートするにあたり、みなさんのすばらしいお力添えなしでは、ここまでくることはできませんでした。ペガーさんは、本当にありがたく思うとともに、すべてのみなさんに心からの感謝をしています。そして、私たちも。いただいたサポートがどれだけありがたかったか、言葉では言い表せません。

ペガーさんのおかれている状況はまだ油断できないものですが、それでも、以前より希望を持てる状態です。

ご想像のとおり、ペガーさんは、この数週間に味わった苦難から回復するための時間を必要としています。また、平和と静けさの中で、日常の生活に戻る必要もあります。

何かありましたら、お知らせいたします。

すべてのみなさまに、愛と連帯を
Friends of Pegah
イギリス、シェフィールドより

Everyone

We have some good news at last! Pegah was granted bail this morning, is now out of Yarls Wood Detention Centre and back with people who will love and care for her. The Court of Appeal have also agreed to hear her case. It will be listed within the next couple of weeks and will be heard sometime in the next few months, we believe.

There are also other actions that we know are being taken on her behalf, by influential organisations at a high level in the UK.

We really don't think that we would have got this far without the fantastic work you have put in supporting Pegah. She is truly grateful and gives her heartfelt thanks to you all - as do we. It is impossible to overstate the value of your support.

This does not mean that Pegah is out of the woods but she is now in a much more hopeful position.

As you will understand Pegah needs time to recover from the ordeal of the past few weeks. She also needs to get back in touch with the ordinary business of living her life in some peace and
tranquility.

We will keep you updated as events develop.

Love and solidarity to you all

Friends of Pegah
Sheffield, UK

Contacts:
Friends of Pegah Campaign
c/o Victoria Hall Methodist Church
Norfolk Street
Sheffield S1 2JB
UK

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週刊金曜日にペガーさんの記事が掲載されました

2007年9月7日発売の週刊金曜日に、ペガーさんの記事が掲載されています。ファイルをアップしましたので、まだご覧になっていないかたは、下記よりダウンロードしてお読みください。

「KINYOU.pdf」をダウンロード

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映画『オフサイド・ガールズ』のお知らせ

Trivia_p1_5


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女の子だって、スタジアムで観戦したい!—

イランで、サッカーは国民的なスポーツ。男性のみならず女性もみんなサッカーが大好き。けれど、女性がスタジアムで男性のスポーツを観戦することは法律で禁止されている。女性は専用のスタジアムで、女子サッカーしか観戦ができないのだ。

そんな中でも、イラン代表の2006年ドイツワールドカップ出場を掛けた大事な一戦が、首都テヘランで行われるとなれば、いくら女だからといってテレビの前でじっとしてなんかいられない! 

少女たちが考えた策—それは、“男装”だった!

「生で試合を見るには、男のフリをしてスタジアムに潜り込むしかない!!」

ルールに逆らって進入禁止のスタジアムに踏み込んだ”オフサイド “な少女たち”の奮闘が始まる—!(『オフサイド・ガールズ』公式サイトより)
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イランのジャファル・パナヒ監督最新作! 9月1日より、日比谷シャンテ・シネをはじめ、順次全国ロードショー。

過去のイラン映画とは一線を画す、「中学生でも楽しめるようなエンターテインメント」「イランの女性問題をユーモラスに描いた作品」。キャストは全員アマチュアを起用、実際のスタジアムでロケ敢行。10分に1度はハプニングが起こる、ハラハラドキドキの90分。

公式サイトには、監督がこの作品を実際の出来事から企画化したというエピソードや、イランについてのトリビア情報が満載です。

*今日、新聞を見てハッと目を奪われました。週末は日比谷へGo!(ミヤマ)

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ぺガーさんのインタビュー(8月27日)

イタリアの新聞La Repubblica紙に掲載された、Paola Coppola氏によるぺガーさんへのインタビュー原稿をいただいたので、ここに訳文を掲載します。インタビューは8月25日に電話で行われました(この英文原稿はイタリアのGroupEveryoneのご好意により、掲載を許可していただきました)。

以下英文+訳文と続きます。Iはインタビュアー、Pはぺガーさんの略です。

ぺガーさんの話した英語をそのままお伝えしたく、このような形にしました。でも、読みにくいようなら、英語は英語だけ、日本語は日本語だけに編集しなおしますので、ご要望のかたはコメント欄にコメントください。


I:For two years you have been suspended between the hope of starting a new life in a free country and the terror of being deported back to Iran where a terrible fate awaits you. How have you experienced this long wait so far?

I:この2年間、自由の国で新しい生活をはじめるという希望と、残酷な運命が待ち受けているイランへ強制送還されるという恐怖のはざまに、見通しの立たないまま生きてこられたと思います。これまでの長い道のりを、いまどのように受け止めていらっしゃいますか。

P:I'm tired. In the beginning I was full of hope, even if I was worried about my father and I really missed my children who were back in Iran. I knew Great Britain was an open-minded country, one that gave shelter to people. So I decided to come here and apply for political asylum. In Sheffield I even found friends who helped me out. Now and then it seemed as though things were working out well, that my request had been granted, then at other times they told me my application would be turned down, that the Home Office did not believe my story and I would be forced to return to Iran. When that happened I wished I was dead.

P:もう疲れ果てました。イランに残してきた父を心配したり、子供たちを恋しく思ったりもしましたが、初めはそれでも希望に満ちていました。英国は開かれた国であり、人々に避難先を与える国だと知っていました。だからこの国に来ること、亡命することを決めたのです。シェフィールドで私を助けてくれる友達にも出会いました。ときにはいろいろうまくいって私の申請が認められるような様子でしたが、またあるときには、私の申請は却下され、内務省には私の話を信じてもらえずにイランに強制送還されると聞くこともありました。それを聞いたときには、死んでいればよかったのに、と思いました。


I:Why do you think they didn't believe you?

I:彼らはなぜあなたを信じなかったのだと思いますか?

P:I don't know. I escaped from Iran because I am a lesbian woman, because I had fallen in love with another woman and it was getting harder and harder to hide the fact. Then she, who was truly beautiful, was arrested. I found myself in the same situation or I would never have fled, seeing I am very attached to my homeland and I love my children. Perhaps they wanted proof, but I don't know what proof I could have provided them with.

P:わかりません。私はレズビアンだから、そして女性と恋に落ちてその事実を隠すことがどんどん難しくなったので、イランから逃げてきました。彼女は本当に美しい人でしたが、やがて逮捕されました。自分も彼女と同じ状況に置かれていることに気づいたんです。そうでなかったら逃げたりしません。私は子供たちをとても愛していますし、祖国に愛着をもっていますから。多分彼らは証拠を求めていたのでしょう。でも、いったい何の証拠を提出することができたというのでしょうか、私にはわかりません。


I:Have you had any news of your partner since her arrest?

I:パートナーの逮捕後どうなったか、聞いていますか?

P:Yes, she was interrogated and sentenced to be stoned to death because she was judged as being immoral. It still hurts when I talk about her.

P:ええ、拷問を受け、石打ちにより処刑されました。不道徳だと裁きを受けたのです。彼女のことを話すと、いまでも胸が痛みます。


I:Thousands of people throughout the world are close to you right now, they suffer with you, they are protesting by sending letters to the Home Office, to governing bodies, embassies and press. They are asking the United Kingdom to grant you asylum because it is your right. Does this great pro-life movement help you feel less alone and give you back a bit of hope?

I:世界中の数多くの人が、いまあなたとともにいます。あなたの苦しみを自分のこととして感じ、内務省や政府、大使館、報道機関などに手紙を送ったりして抗議しています。みな、イギリス政府にあなたの難民申請を認めるよう要求しています。それはあなたの当然の権利だからです。人命を守ろうとする人々のこういった動きを目の当たりにして、孤独が和らいだり、すこしは希望を感じたりしますか?

P:Yes, all these friendly voices help me retain a bit of hope. Since they brought me here to the Yarlswood Detention Centre all I have thought about is death. I lost all faith and I wished I could die here, without having to go back to Iran, where something much crueler awaits me, something more painful than death.

But I believe in God’s goodness and then suddenly a miracle happened. “Pegah,” a friend of mine told me over the phone, “the whole world is talking about you. A movement has been created which is asking for your life to be spared, asking for your request for asylum to be granted. Your name is in all the papers, on the Internet, everyone’s talking about you.”

Lots of people are taking care of my case now, even a British MP. I have discovered I have a lot of friends, not only among the British movements for homosexual rights, but also friends in Italy who are working hard to save me. I want to thank, in particular, the italian "EveryOne Group", that brought my case all over the world, involving politics, intellectuals and hundred of thousands of people. When the EveryOne Group started to work on my case, my fly to Teheran was already set.

Today, instead, there is still hope for me. The person who is following and helping me here in Sheffield has a name for all the people who have decided to help me: the Friends of Pegah Campaign.

P:ええ、こういった友情に満ちた声すべてが、希望を与えてくれています。ヤールズウッドの収容所に来てからは、死ぬことしか考えられませんでした。信じられるものはもう何もなく、死よりもつらい残酷なことが待ち受けているイランに帰るぐらいなら、死ぬほうがましだと思いました。

それでも私は神の善良さを信じようと思い、そして、突然奇跡が起こったのです。「ぺガー」、友だちが電話で言いました。「世界中の人たちが君のことを話しているんだ。君の難民申請が認められるよう、命が救われるようにと人々が動きだした。君の名前が新聞やインターネットに出て、みんな君のことを話している」。

多くの人が私のケースのために尽力してくださっています。そのなかにはイギリスの国会議員もいます。私には多くの友人がいることを知りました。イギリスで同性愛者のための運動をしている人たちだけでなく、イタリアの人たちも私のことを助けようと必死になってくれています。特に、EveryOneグループのみなさんには、たいへん感謝しています。彼らのおかげで、私のことが世界に広まり、政治家、学識者、そして幾千もの人々が支援の輪に加わってくれたのです。EveryOneグループが私の支援をはじめてくれたとき、強制送還のためテヘラン行きの航空便が準備されていました。

いま、私には希望があります。シェフィールドで私のことを助けてくれている人が、私を支援してくださっているみなさんすべてのことを「フレンズ・オブ・ぺガー・キャンペーン」と呼んでいます。


I:In Iran homosexual people are forced to keep it secret, because if they are found out they risk torture, 100 lashings and when they are “second-time offenders”, death by stoning or hanging. Iranian gays and lesbians are following your case with trepidation and they now consider you a symbol. What are your feelings when you think of them?

I:イランでは、同性愛者はセクシュアリティを隠すことを強要されています。拷問にあったり、100回のむち打ちを受けたり、二度目となると石を投げられたり、吊るされたりして処刑される危険に直面しているからです。イランのゲイやレズビアンの人たちは、あなたのケースを不安を覚えながらも彼らのシンボルとして注目していると思います。こういったイランのゲイやレズビアンの人たちについては、どのように感じていますか?

P:I feel worried and anguished. I just hope things change, that the laws change.

P:とても心配だし、悲痛な思いです。ただただ変化が起こり、法律が変えられることを望みます。


I:Do you have a message for the authorities who are responsible for deciding whether to grant political asylum to homosexual refugees?

I:同性愛者の難民に政治亡命を認めるかどうか決断を下す当該機関に対し、どのようなことを伝えたいですか?

P:Save their lives.

P:彼らの人命を救ってください。


I:You were condemned because of your way of loving, merely because it is different from the majority of people. The great Irish writer Oscar Wilde defined the sentiments of a person for someone of the same sex as “the love that dare not speak its name”. You had the courage to tell the world. What does love represent for you?

I:あなたはあなたの愛の形のために、それがマジョリティの人々とは違うことから、非難されました。アイルランドの文筆家オスカー・ワイルドは、同性に向かう感情を「あえてその名を口にせぬ愛」と名づけました。それを世界に告げる勇気があったあなたにとって、愛とは何ですか。

P:It is the most important thing. Thanks to love most men and women create a family and fulfil their lives. As you know, it was love that guided my life and whatever happens to me, it will be love that guides me still.

P:愛は一番大事なことです。愛があるおかげで、多くの人々は家族を作り、実りある人生を送ります。ご存知の通り、愛こそが私の人生を導いてきたものであり、どんなことがあったとしても、これからも愛に導かれてゆくでしょう。


I:We are all convinced there will be a happy outcome to your story, that your rights will soon be acknowledged. Have you already thought about your future, about the dreams you wish to come true?

I:私たちはあなたの人権が認められ、いい結果がでるはずだと信じています。これからのこと、かなえたい夢などがあればお聞かせください。

P:I want to walk among people, without looking behind me, and being able to say to myself; “I am free”.

P:人ごみのなかを、誰かを気にして振り返ることなく歩きたいです。「私は自由だ」と言いながら。

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ぺガーさんからのメッセージ(9月8日)

9月8日、イタリアのGroupEveryOneのメンバーRoberto Maliniさんから、ぺガーさんとコンタクトを取っているイラン在住のイラン人女性から、彼女のぺガーさんとのやりとりについての話を聞きました。この女性のメッセージを以下に要約して伝えます。支援の動きは、ぺガーさんにも伝わっているようですね。もちろん私も皆さんと同じ一支援者ですが、このブログを見てそれぞれの場でご協力頂いたすべての方に、心よりお礼を申し上げます。ほんとうにありがとうございます。(ほ)

(以下、イラン人女性のメッセージの要約です。)

「ぺガーさんは、未来への保証もなく、こころにたくさんの痛みを抱えながらも、支援してくれている多くの人たちの存在を励みにしています。彼女は自身の子供たちと離れていることがとてもつらいけれど、さまざまなところからの支援に、生きる希望と新しいエネルギーを注いでくれる愛を感じ、だいぶ落ち着いてきたと話しています。

また、ぺガーさんからしてみたら、全く見ず知らずの人たちが、ここまで支援してくれていることが信じられなく、驚きつつも感謝の気持ちでいっぱいだそうです。特に、彼女がイギリスで出会ったイラン人の知り合いも、彼女の難民申請の理由をしった途端に彼女とコンタクトを絶ったということから考えたら、ぺガーさんがそう感じるのも無理もないでしょう。

ぺガーさんは、今回支援の輪に加わってくれた人々に、いつか会いたいと話しています。彼女は受け取った花をとても大事にしていて、収容所に届いた手紙、カードも繰り返し読んでいるそうです。今はまだ多くの人前に出る用意ができていないそうですが、自由になった時には、ヒューマニティー、人々のために何かしたいとも語っていました。」


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【ミヤマ】ペガー・ケースは「同性愛問題」である(5)

35
以上、ここに書いたことは緻密さをまったく保証しない。その多くはわたし個人の想像力によって書かれたものだ。だから、スコット・ロング氏の主張とは真逆のことをやっているので、かれには怒られるかも。だが、事実に注目すべき側面と、想像力を働かせるべき側面の両方が重要だ。イランの現状については事実追究が必要だが、そこから逃れてきた亡命者たちに対して事実追究の姿勢を貫くことは仇となる場合がある。尊厳を損なわれつづけてきたかれらに対して持つべきは、できる限りの想像力をもって寄り添う姿勢だとわたしは信じている。

36
そして、もしできることならば、ここに記したことをペガーさん本人に伝えてみたい。わたしの想像力はかのじょに届くだろうか。あるいは、まったく届かないか、あるいは、かのじょの胸をえぐることになるだろうか。

37(蛇足2)
にしても、米国の「ソドミー法」というネーミングはなんとかならないものか。これは聖書に登場するソドムの町にちなんでいるが、このネーミングを引用しつづけることで、「ソドムの罪=同性愛による罪→同性愛は罪」という誤読を誘導し、同性愛は不道徳であるとする規範の維持・強化に加担しかねない。ソドムの町が滅んだのは、その町のだれもが己の欲望充足を優先させて快楽にふけり、貧者や弱者をいじめ苦しめて助けようとしなかったからである(また、資料批判的な立場からは、ソドムの罪は同性愛ではなく、旅行者保護義務違反との解釈もある)。

38
最後に。ここまで考えるきっかけを与えてくれた<声>に、多謝。そして、さようなら。

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【ミヤマ】ペガー・ケースは「同性愛問題」である(4)

27
しつこく繰り返すが、ペガー・ケースを「同性愛の問題」と規定することは、イランの政策を批判し、「同性愛(行為)者を迫害するイランを粛清せよ!」と訴えることとけっしてイコールではない。性的指向によって迫害を受ける可能性がひじょうに高い亡命者を、難民として受け入れる側にこそ同性愛差別が存在するのである。性的指向という「目に見えにくい」「センシティブな」属性ゆえの差別が。

28
同性愛難民は、国籍国においては自身の性的指向を(しかも密告という形で!)アウティングされ(*注1)、難民申請先の国では、カムアウトだけでは済まされず、「証拠」を要求される。私的領域にかかわるデリケートな属性を、当人の意思に反して暴露される恐怖と恥辱、告白させられる苦痛と屈辱、申請を却下された驚愕と絶望。自国ではひた隠しにしておいた性的指向が不本意ながら発覚し、申請先にカムアウトしても、「同性愛者である証拠がない(ペガーさんの場合)」「自国に戻っても、自分の性的指向を隠しておけば、迫害を受けることなく平穏に暮らせる(シェイダさんの場合)」(*注2)とされ、難民としての保護が受けられない。同性愛難民は、二重三重に尊厳が損なわれているのである。

(*注1):イラン刑法117条では、「同性愛行為の処刑には四人の証人の証言が必要」とされているが、イランで同性愛の処刑は(1)四人の証言、(2)四回の自白、(3)裁判官の「慣習的な方法」によって実行することができる。また、上原論文 (p10)脚注17において、在米イラン人権問題専門家グダーズ・エグデダーリ氏の「シャリーア(表記ママ)法は人々の日常生活に大きな影響力をもっており、特に都市を離れ地方に行けば行くほどその傾向は強く、家族によって当局に密告される可能性もある」という発言を引用している。

(*注2)シェイダさんの判決の不条理さについては、Daily Bullshit『死ねというのと同じ』を参照のこと。

29
では、各国で難民申請を受ける担当窓口にLGBT当事者の審査官を配置させれば、申請者が間違いなく同性愛者であることを見抜けるのか。答えはイエスでもあり、ノーでもある。自らのクィア・コンシャスネス(あえて「性的指向」という表現を採用せず)を職能として活かせるほどのLGBT当事者であれば、非当事者を当事者と間違えることはまずないと考えられるが(同性愛者を騙った虚偽の難民申請に対するセイフティ・ガードにはなりうるか?)、逆に当事者の当事者性を否定・否認するおそれも十分に考えられる。

30
卑近な例からその根拠を述べると、わたしの身近にも、「あのひとは“本当の”レズビアンではない」などと、当事者の性的指向を第三者が勝手に判定してみせる言説がしばしば聞かれる。しかも判定者のレズビアン・コンシャスネスが高ければ高いほど、レズビアン定義のハードルがどんどん高くなり、その定義から排斥され周辺化されるレズビアンが多くなっていく(アイデンティティ・ポリティクスが隘路に入り込んでいく)。

31
人権団体Human Rights Watch(HRW)のLGBT人権プロジェクト責任者であるスコット・ロング氏は、「私たちはLGBTイラン人たちを、信頼できる事実でサポートしていきたいと思っている」「事実こそがイランにおける人権侵害と戦う武器」「私たちは事実を見極め、我々の活動をどこに向けていくべきかを話し合わなければならない」と語り、事実を把握することの重要性を説く。それは確かにそうだ。そこに反論の余地は一切ない。

32
そして、各国の難民受け入れ当局もまた、迫害国と被迫害者に関する事実を把握することの重要性を充分すぎるほど認識しているはずだし、その認識のもとに、申請者が「同性愛者である証拠」を事実として確認すべく職務を遂行している。彼らが慎重な判断を行なうためにこのような姿勢をとっているのなら、非難される筋合いはひとつもない。

33
だが、「事実」とはいったいなにか。「誰から見ても明らかなもの」と定義するのであれば、「セクシュアリティという個人の内的事実」は、「事実」とはみなされにくい。それにしてもおかしな話である。異性愛者であることには証拠は求められないが、同性愛者であることには証拠が必要だ。異性愛者であるという内的事実は他者(非異性愛者)の承認を必要としないが、同性愛者であるという内的事実は、他者(異性愛者)の承認を得なければ「事実」として承認されない。これが同性愛差別問題でなくて、いったいなんであろうか。

34
また、ひじょうに皮肉なことに、国籍国では当局に通報されないよう、公にはクローゼットとして生活していた同性愛者が、難民申請先では「同性愛者である証拠がない(国籍国で申請者が同性愛者であることを確認されていない)」と言われる。証拠が残らないよう暮らしていたのだから、そんなのあったり前じゃないか! 

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【ミヤマ】ペガー・ケースは「同性愛問題」である(3)

22 問題提起(箇条書き)
●ペガーさんがイランから逃亡した理由はなにか?

彼女がレズビアンでなければ迫害のおそれも亡命の必要もなかった。

→イラン政府をバッシングしたり、法律を変えろと外圧をかけたところで事態は収束しない。

 現状では、政府(現体制)がシャーリア法の改正に動くことはまず考えられない。

 逆に、イラン国内の同性愛者(とその家族)たちへの迫害に拍車をかけかねない。

→「内政干渉するな」という声を聞くが、人権擁護運動はそもそも内政干渉ではないのか?

●イギリス政府がペガーさんの申請を却下した理由はなにか?

「同性愛者であるという証拠がない」

セクシュアリティを示す証拠を要求すること自体、性的多様者(マイノリティ)への人権侵害と考えられる。

23 難民の定義
上原道子さんの平成18年度卒論『同性愛者の難民申請 —UNHCRの認定基準に関する考察—』を参照したまとめ)

●難民の定義
(1951年ジュネーブで採択された難民条約(難民の地位に関する条約)におけるもの)

難民条約第1条A(2)
「[…]人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者」

▼「特定の社会的集団」
「似通った背景、習慣又は社会的地位を有する者から成っている」
UNHCR:国連難民高等弁務官事務所発行による通称「難民認定基準ハンドブック」より)

「社会的集団」=アイデンティティ・カテゴリ。解釈はさまざま。

・集団の信念や行為に注目し、他者からの認知を重視する立場。

・集団の特徴の固有性・歴史性に重点を置く立場。

「『特定の社会的集団』とは、迫害のおそれ以外に共通の特性を共有する者、あるいは、社会により一つの集団として認識される者の集団をいう。ここにいう特性とは、多くの場合、生来の、変更不可能な特性若しくはアイデンティティ、良心又は人権の行使の根源をなすものを指す」(UNHCRによる定義)

▼「政治的意見」
・異なる性的指向に関する意見を含む(UNHCRの認定基準)。

・申請者が当局または社会の政策、伝統に批判的で容認されない意見を有していること。

・その意見が当局または社会の関係する派閥に知られていること、知られえたこと。

→UNHCRは、「政治的意見」を理由とする迫害の認定には、意見が既に表明されていることを要件としていない。同性愛者自身に政治的思惑がないとしても、同性愛行為を禁ずる国家または政府の政策上、自身の性的指向を尊重し実行すること自体が処罰の対象になるので、同性愛行為を行ったために迫害を受けるおそれのある申請者は、理論的には「政治的意見」の項目に該当すると考えられる。

24
イギリス内務省がペガーさんの難民申請を一度却下した理由は「彼女が同性愛者である証拠がない」というものだったが、「同性愛者である証拠」とは、迫害を受けるおそれのある性的マイノリティの申請者が、国籍国において「特定の社会的集団」に属していたという事実の裏づけがあるかどうか、もしくは迫害を受けるおそれが十分にあると考えられる「政治的意見」の持ち主であるかどうか、ということ。

25
また、性的マイノリティが難民の定義に含まれるには、自身の性的志向を尊重し実行したことによって成立するとされる「政治的意見」が、「当局または社会の関係する派閥に知られていること、知られえたこと」(表明)が前提とされているが、同性愛行為を禁ずる国家・政府において性的マイノリティの「政治的意見」を「表明」するということは即逮捕・監禁・処罰につながるため、当局に発覚する前に国外逃亡を実行するケースもありうる。

26
上原論文では、「同性愛者であると同時にその地位向上や待遇是正を求めて意見を主張する者のみが、『政治的意見』を有することを理由にした難民認定を得られるだろう」(p10)とあるが、難民と認められるべき<理想の同性愛難民像>というアイデンティティ・カテゴリが、当事者側ではなく認定側によって疎外的に形成され、現実の同性愛難民がそのカテゴリから排斥されるおそれがある。難民もまた階層化していき、「エリート同性愛者(同性愛者であると同時にその地位向上や待遇是正を求めて意見を主張する者)」のみが難民として認定されるのではなかろうか(アイデンティティ・ポリティクスの問題点)。

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【ミヤマ】ペガー・ケースは「同性愛問題」である(2)

12
イラン人同性愛者が難民として初めて認定されたのは1983年のドイツ・ヴィースバーデン行政裁判所にて。同性愛者難民を生み出したのは、同性愛行為に極刑を科す制度を制定した体制国家である。シェイダさんもペガーさんも、そのような国家によって性的指向の違いから迫害を受けそうになったために、難民申請を行ったのだ。なのになぜ、<声>はこれらのケースを「同性愛問題ではない」と排除するのか?

13
それは、「イラン国内にとどまっている同性愛者の仲間(とその家族)たちの安全をはかるため」だという。同国の同性愛者処刑に激しい怒りを感じるひとたちが、対イラン政府バッシング・キャンペーンを起こして当局を刺激すれば、同国内の同性愛者やその家族たちがどんな目に遭わされるかわからないのだ、と<声>は警告する。この警告は正しい。

14
だが、残念ながら<声>は二つの問題を混同している。ペガー・ケース(<声>とのあいだの争点はこちらなので、シェイダ・ケースに関しては今後割愛)を「同性愛問題」と同定することは、すなわち「イラン国家体制批判(内政干渉)」につながると考えているらしいのだ。主にダグ・アイルランドの前例を引いて、「同性愛当事者運動は怒りにまかせて暴走し、イランを刺激しかねない」と憂えているようだが、わたしはイラン・バッシングをしたいわけではない。むしろバッシングには関心がない(そういう意味でイランに関心はない。「叩く」ための関心はイランに向ける気がない)。

15
そのことは何度も伝えてきたにもかかわらず、<声>はこれまでの前例から判断して、わたし(ブログ管理人のひとりとして)がイラン・バッシングに暴走するのではないかと懸念している。いったいなにを根拠に、わたしが前例どおりの定型思考行動モデルにハマると想定しているのか、理解しがたい。根拠があるとしても、それはわたしの外側にあるものである(要するに<声>はわたしの言い分など聞いちゃいないのだ)。<声>自身の凝り固まった思考モデルをわたしに投影して、明後日な方向の心配ばかりを向けてくるので、とてもウザい。

16
<声>は何度も執拗に、ペガー・ケースと同性愛問題を切り離させようとしてきた。ペガー・ケースは同性愛の問題ではない、イミグレの問題である、難民申請が通らなくて強制送還させられているひとたちはほかにもたくさんいる、だからこれは同性愛に限った話ではない、むしろ同性愛は関係ない、とさんざん釘を刺されると、天邪鬼のわたしとしては、ならば逆にペガー・ケースから同性愛難民特有の問題を抽出してみようではないか、と思った次第である。

17
「そんなことしてなんになるの?」と<声>は言うだろう。わたしだってあらかじめ答え(結果)を知ったうえで取りかかるわけではない。逆に言えば、「なんになる」かあらかじめわかったうえでとられる人間の行動なんて、どれほどあるだろうか。そして、そのなかでどれほどの行動が想定した結果に到達しただろうか。

18
当事者性を排除したがる者には、わたしのやろうとしていることの目的はわからないし、仮にその目的を理解したとしても、他山の石ほどの助けにすらならないだろう。当たり前だ。わたしは当事者性を排除したがる者たちの援助をする気などさらさらないのだから。わたしがペガー・ケースから同性愛難民特有の問題を抽出するのは、わたし自身が想像力によってペガーさんにどれだけ寄り添えるかを確かめてみたいのと、当事者意識を持つひとたちに、この想像力による呼びかけを行ってみたいからだ。

19
改めてもう一度書く。わたしはイラン・バッシングを目指しているわけではない。そして、ペガー・ケースを「同性愛問題」と同定することは、わたしのなかでは「イラン国家体制批判」にはつながらない。この2点を明言したうえで、わたしは、「ペガー・ケースは同性愛問題である」と同定する。

20
そしてまた、「(同性愛行為を刑法で厳しく取り締まる)イランと(同性愛差別の刑法はない)日本は違う」という主張には、「違うけれども違わない」「違いはあるがつながっている」と宣言する。「ペガー・ケースとホモフォビアは関係ない」という主張にはノーと言っておく。

21
同性愛難民認定の問題を、従来の難民認定問題に回収し、埋没させるわけにはいかない。イミグレと同性愛差別が交差した点に、同性愛難民が抱え込まされる困難がある。

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【ミヤマ】ペガー・ケースは「同性愛問題」である(1)


性的指向にかかわるヘイトクライムや、今回のペガー・ケースのように同性愛迫害国からの難民申請案件が話題になると、きまって「同性を愛することは罪なのか?」というヒロイックな嘆きの表現が聞かれる。わたしはこの手の問いにはうんざりしている。


まず、誰に向かって問いかけているかが不明だからだ。電車内で偶然居合わせただけの見知らぬだれかが携帯電話でしゃべっているのを強制的に聞かされる不快さに通じる(電話を手に持っていなければただの独り言にしか聞こえない不快感)。次に、この問いがなんらかの回答を求めているようには思えない(求めているとしたら回答ではなく質問者への同意や共感だろう。反論を予想しているとも、それに対する論理的に有効なレスポンスが用意されているとも思えない)。つまり、疑問形をとった独り言にしか聞こえない。自らの嘆きの声に陶酔するような自己完結性を帯びている。情緒的発言を口にすることで自らを慰撫しているにすぎない、閉じた疑問だ。だから、「同性を愛することは罪なのか?」という問いは無意味である。


もうこの手の常套表現は聞き飽きたから、そろそろ誰かなんかほかのこと言ってくれないかな、と他力本願してもなかなか出てこないので(わたしが知らないだけかもしれないが)、自分で違う言説を起こすことにした。


また、このテキストを書くに至った動機には、ペガー・ケースを端緒としてわたしを憤らせている言説がある。「ペガー・ケースは同性愛問題ではない。セクシュアリティやホモフォビアとは関係ない」とする<声>だ。


わたしは現在、イランに対して感じる怒りよりも、ペガー・ケースと「同性愛問題」を切り離させようと言論圧力をかけてくる<声>に対する怒りのほうが強い。この怒りを正当に表現したい。押さえつけられたくもないし、わたしの思考を強制停止されることによって、この怒りをゆがめられたくもない。怒りの底にあるものをきちんと見つめたい。


<声>よ。おまえに問いたい。おまえはわたしに向かって吐いた「ペガーさんの件は『同性愛問題』ではまったくない」という言葉を、ペガーさん本人に向かって直接言えるのか? わたしは言えない。言いたくない。だからわたしはわたしで、ペガーさんに向けたメッセージとしてこのテキストをしたためることにした。


話を少し戻す。正直に告白すれば、わたしは日本で初めて同性愛者として難民申請したイラン人男性シェイダさんのケースは、オンタイムではその詳細をあまり知らなかった。しかし、今回ペガー・ケースにコミットして、あらためてシェイダさんの裁判事例について参照したが、「自分がかれらの国に生まれていたら、間違いなく死刑か国外逃亡(亡命)だ」と思ったのが、わたしの原点。


「それがどうしたの? 原点だからなに?」と反射的につぶやいた察しの悪いひとは、時間の無駄なのでこの先は読まなくて結構。わたしは当事者意識、当事者主権の観点に立って思考を巡らせているので、当事者意識に欠けるひとたち、あるいは当事者意識を排除しなければ話を先にすすめられないと考えているひとたち(いずれも非当事者とは限らない)の論考には、わたしの考察はまったくなんの役にも立たないであろうことを、あらかじめアナウンスしておく。


イランでは、ホメイニ師による1979年のイラン・イスラム革命によって、民主化を推進していた王政が崩壊して以来、イスラム教聖職者による支配体制がつづいている。イランの刑法は、現体制が国教とするイスラム教シーア派の立場からイスラム法(シャーリア)を解釈して制定されたもの。イラン政府が同性愛行為を刑法で禁じる根拠はイスラム法であり、そこからさらに遡るべき根拠はない。

10(蛇足1)
そもそも、いかなる法にもその正当性・無矛盾性を説明できる最終的絶対的根拠などない(ミュンヒハウゼンのトリレンマ参照)。殺人が罪に問われるのは、殺人罪が刑法に制定されているからだ。殺人そのものを絶対悪とする決め手となる根拠はどこにもない。

11(蛇足2)
冒頭に挙げた不毛な質問にあえて答えるとすると、同性愛が罪に問われるのは、刑法上同性愛を犯罪として罰する制度をもつ国家体制においてのみだ。だからそういう国家体制に対して涙目で「同性を愛することは罪ですか……?」と問えば、「当たり前だろがっ!」で終了。「それがルール(原理)だからだ」という以外に根拠はない。根拠を遡って問うても、遅かれ早かれ「悪いから悪いのだ」「罪だから罪なのだ」というトートロジーにハマりこむのがオチである。

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東京、パリ、ローマ。

少し前の話になりますが、報告させてください。

8月27日に、私たちはこのブログで呼びかけて集まった賛同人と共に、イギリス大使館にぺガーさんの難民申請認定の要請書を提出しました。その夜、私たちが眠りについた頃、イタリアのローマとフランスのパリでも同様なアクションが行われました。

時差もあり、言葉も違い、やり方も違うアクションですが、ぺガーさんへの気持ちは同じです。ぺガーさんのニュースがこうして世界にリアルタイムで流れ、同じ日に抗議活動をしているのも、インターネットのおかげでしょうか。

イタリアの大使館前でのアクションの様子はこちらに写真があります。

http://pega-must-stay.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/3_a772.html

フランスのピンク・パンサーという団体が行った、「DIE-IN」の模様はこちらです。

Parisdiein1

Parisdiein2

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Flowers for Pegah キャンペーン

2007年9月5日追記:

以下の呼びかけはストップさせていただきます。世界中からペガーさん宛の花束がたくさん届いて、対処しきれないそうです。

ペガーさんは多くの花束が届けられたことをたいへん喜んでいます。これからは、手紙やカードなどのメッセージのみにしてください。よろしくお願いいたします。

手紙の送り先はこちらです。

Pegah Emambakhsh, Yarl's Wood Immigration Removal Centre, Twinwood Road, Clapham, Bedfordshire MK41 6HL, United Kingdom - Telephone 01234 821000

(追記代理:ミ)


***


先週より、イタリアのアクティビストたちによって、今、収容所の中で精神的にも肉体的にも疲弊しているであろうぺガーさんにお花を届けようという呼びかけが行われています。

個人が、友だちとして、できること。なんだか素敵な呼びかけだと思いました。

そして、呼びかけ人のひとりであるイタリアのロベルトさんからの9月4日付けの報告のメールに、

We have spoken with Pegah; she is better and now she thinks to the future with optimism.The action "Flowers for Pegah", also thanks to the support of Hervé, is an incredible success. Tousands of bunch of flowers arrive to the prison of Yarlswood. 

ぺガーさんと直接話をしましたが、彼女もすこしよくなってきて、未来に希望がもてると感じているようです。Hervéさんの協力もあり、ぺガーさんにお花を贈ろうというアクションは大成功でした。多くの花束がヤールズウッド収容所に届きました。

と、ありました。

すこしほっとすると同時に、こうして世間に全く知られることなく、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーであることを理由に命を落としている数多くの人たちのことを思いました。世界のどこかで、今どこかで、殺されたり、暴力を受けたり、直接的な身体的な暴力ではなくとも生きることを否定されながら存在する人たちがいる。何ともいえない気持ちになりました。(ほ)

Flowers_for_pegah_2

http://spartakism.wordpress.com/2007/09/01/action-des-fleurs-pour-pegah/

Send flowers to Pegah Emambakhsh

Pegah Emambakhsh is completely worn out. Till now her life has been characterized by pain, fear and death. She is a nice, reserved, religious and optimistic woman, but the world till now has offered her just discrimination, hatred, persecution, humiliation, injustice and imprisonment.

Even now that her drama is known all over the world, even now that in many we pray for her, for her future, she's penned in a cold prison, without privacy, love or human warmth.

Dear friends, let's make her to feel our love saying her that we're not all the same persons, that good persons exist, people who believe in brotherhood and solidarity. Send her a flower or a bunch of flowers with any flowers shipment service: Roses, Lilies or Gerberas. Flowers of all the colours, perfumed like the justice. Roses and Asylum for Pegah!

Send her flowers to the following address: Pegah Emambakhsh, Yarl's Wood Immigration Removal Centre, Twinwood Road, Clapham, Bedfordshire MK41 6HL, United Kingdom - Telephone 01234 821000

For EveryOne Group, Roberto Malini

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ぺガーさんのインタビュー

(9月4日追記)

イタリア語の翻訳をやってくださるという方がなかなかいないので、イタリアのグループエブリワンのロベルトさんに相談したところ、英語のインタビュー原稿を頂きました。できるだけ早くアップするようにしますので、すみませんがしばしお待ちを。待て次回!

XXXXXX

(以下、9月3日の時点で書いたこと)

8月26日付けのイタリアの新聞にぺガーさんのインタビューが載ったそうです。

ぺガーさん自身が何を語っているのか、とっても気になります。でも、イタリア語なのでさっぱりわかりません……。(今、ほんやくコンニャクがのどから手が出るほど欲しいです。ドラえもん、これを見てたら管理人にメールしてね。)

そこで、イタリア語の翻訳ができる方、どなたかこの記事を訳していただけないでしょうか。

やっていただけるという方がいらっしゃったら、作業のダブりを防ぐため、管理人までメールでご一報ください。(同時進行で複数の方に同じものを訳していただくと申し訳ないのと、あと他にもイタリア語の記事がいろいろありますので…。メールアドレスはプロフィール欄にあります。)また、知人友人でやってくれそうだという方がいらっしゃる場合は、ぜひメッセージをお伝えください。

記事はこちらのURLにあります。http://oknotizie.alice.it/go.php?us=498112b9e47d03a9

どうか、よろしくお願いします。(いつもお願いばかりのほんやく係より。)

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【ミヤマ】さて、どこから手をつけようか

このブログを開設して10日目となりました。その間、署名のご協力、賛同人としての同意メッセージ、ペガーさんやこのブログへの励ましのメール、コメント、トラックバックをたくさんいただき、たいへん感謝しております。

ただひとつ、引っかかることが。

それは、「レズビアンという理由だけで殺されるなんて!」というご意見。

確かに、今回のケースは同性愛差別が絡んでいます。まったく無関係ではありません。実際、わたしたちは「レズビアン」という身近な共通点から、ペガーさんの支援アクションに身を乗り出しました。それは紛れもない事実です。

しかし、わたしたちが現在訴えているのは、イラン政府へのバッシングではなく、イギリス政府が難民条約(難民の地位に関する条約。1951年に国際連合が採択した国際条約)に反した決裁をおこなおうとしたことに対する抗議です。

難民条約が対象とする難民は、「人種・宗教・国籍・政治的信条などが原因で、自国の政府から迫害を受ける恐れがあるために国外に逃れた者」と定義されています。ペガーさんが難民申請を棄却された理由は、「同性愛者であるという証拠がない」というものでしたが、イギリス政府がその証拠を証拠として承認しなくても、ペガーさんが自国に送り返されれば「迫害を受ける恐れ」は十分にあります。

現・イギリス内務大臣ジャッキー・スミス氏は、ゲイ・フレンドリーな政治家として知られていますが、ペガーさんの申請が却下された当時の大臣はジョン・リード氏(ゴリゴリの強硬派だそうです)で、彼は難民申請を却下された人たちをどんどん自国に送り返すことに一生懸命でした(このあたりの詳細は、以前のエントリでもご紹介した難民申請却下でイランに送還されそうなペガーさんの件、説明(1)難民申請却下でイランに送還されそうなペガーさんの件、説明(2)をお読みください)。

「でも、そもそもはイランが同性愛者を死刑にするからじゃないの?」と疑問をお持ちのかたは、ゲイ・ジャパン・ニュースさんの「コラム:イランに関する論争」をお読みください。とても重要なことが記載されています。


……という具合に、この短いあいだにも、いろいろいろいろ調べたり、いろいろいろいろなかたがたのご意見を拝聴したりして、頭が混乱しつつ、少しずつではありますがわかってきたこと、そして新たな疑問、調べなきゃいけないなあという事柄が出てまいりました。


そんなわけで、とっかかりとして以下の書籍と参考サイトをあげておきます(おすすめ書籍のご紹介ありがとうございます!>Nさま)。いずれもこれから読むものです。本にしてもサイトにしても、玉石混淆の海原に乗り出したばかりですので、信頼できる情報がなんであるのかは、まだわたしにはわかりません(この書籍/サイトが参考になるよ! という情報をぜひお寄せください。コメント欄でもメールでもかまいません)。

読んでわかったこと、そこから派生する疑問などを、「学習メモ」として随時アップしていく予定です。

***

■書籍

■サイト
イスラム教はもともとキリスト教よりも同性愛に寛容だったというお話

【参考】西洋における男性同性愛者観の移り変わり

チームS・シェイダさん救援グループ

Wikipedia「イスラーム世界の少年愛」

松岡陽子マックレインのアメリカ報告「差別——この50年(その4)同性愛、宗教」

国連・同性愛差別禁止決議案がイスラム教国によって阻止される(2003年5月)

国連で同性愛アジェンダを進める急進的同性愛者達(2007年8月5日)

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サンフランシスコからのメッセージ

アメリカ、サンフランシスコのアクティビスト、マイケルさんから、当ブログにこのようなメッセージを頂きました。マイケルさんは1970年代からゲイ・ライツ・アクティヴィストとして活動しており、80年代にニューヨークに設立されたエイズ・アクティヴィズム団体「ACT-UP」の中心的メンバーでした。現在はサンフランシスコ在住で、CNN、ABC News、National Public Radioなどに出演し、New York TimesやThe Wall Street Journalに記事を書いています。

彼のブログ「The Petrelis Files」では、大手メディアが取り上げないニュースや事件をレポートしています。

http://mpetrelis.blogspot.com/

これから一緒にいろいろやりましょうよ!ということで。(注:文中のゲイという言葉はゲイ男子のみ、というより広い意味で使われていると思います。)

マイケルさんにコンタクトを取りたい方、またこのような海外との連携の動きに興味のある方は当ブログの管理人メルアドまでお気軽にご連絡ください。

(以下訳文、英文が続きます。こちらの台所状況を察し(笑)、早速翻訳してくださったゲイジャパンニュースの山下梓さま、どうもありがとうございます。

こんにちは

私は、サンフランシスコで活動するゲイ・アクティビストです。ペガーさんのキャンペーンにも、その他多くのLGBTの問題にも携わっています。ウェブ上で、世界中の人と接触できるようにと、ブログを立ちあげています。

路上での抗議運動、手紙を書くこと、キャンドル・ナイトなど、あらゆる形の活動を呼びかけるLGBT活動家の非公式なグローバル・ネットワークが存在します。私たちは、過去2~3年間活動しており、ネットワークの輪を広げたいと思っています。

私の願いは、日本のLGBTのみなさんと連絡を取り合えること。ペガーさんの強制送還に反対して英国大使館前でしてくださった抗議行動に感謝し、そして、将来、私たちとともに活動していただきたいと思います。

今後、どのような形で協働できるかを探るため、日本のLGBT活動家のみなさんに、私を仲間に加えてくださるとともに、私に連絡をとってくださるように伝えていただけますか?

ペガーさんの件で、日本からお力を貸してくださり、どうもありがとう。近く協働できることを願いつつ、あなた方、そして、他の日本のLGBTのみなさんからの連絡を心待ちにしています。

草々

Michael Petrelis

Hi,

I am a gay activist in San Francisco very much involved with both the Pegah campaign and many global LGBT issues. My blog is the primarily way I reach people on the web and around the world.

There is an informal global network of LGBT activists who coordinate all sorts of activities: street protests, letter writing, candle light vigils. We work together over 2-3 years now and wish to expand our contacts.

My desire is to reach out to Japanese gays, first to say thanks for the protest this week at the British embassy ofr Pegah, and second to ask them to work with us on future actions.

Will you please put me in touch with Japanese gay activists, and also ask them to contact me, to see how we can work together in the future.

Thanks for your help in spreading the work from Japan regarding Pegah and I look forwarding to hearing from you and other Japanese gays, as we hopefully work together in the very near future.

Best regards,
Michael Petrelis

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